日曜日に畑にレタスの苗を定植した。はびこっている雑草をぬき、流れた土をシャベルで元通り畝に上げてジェムを蒔いてから耕すのである。その後苗を植えて行く。その作業のをしていると、背中に突然痛みが走った。まるで針に刺されたような痛みである。当日は、ヤフーオークションで買った、ごわごわした綿製の、フード付きの古着を来ていたので、忘れられた縫い針か、ホッチキスの針でも残っているのかと思い、裏返して調べるが、そのような物はどこにも見あたらない。上着を着直して作業を続けた。

すると今度は右の脇腹、左右の脇の下、背中、至る所で激痛が走る。暫くすると収まり掛けるが、その後10分間隔位でまたも痛み出す。泣くような思いで定植作業をすませ、ガソリンポンプを引き出して川から水を汲み上げてレタスにまいた。本当のところは、一刻も早く帰ってシャワーを浴び、この痛みから抜け出したかったのだが・・・。石鹸で体の隅々まで3回洗い流した。その日は何事もなく、午後からは本を読んで過ごした。

変化が起こったのは翌月曜日の昼頃であった。体がかゆくなり、シャツを引き上げて調べてみると、昨日痛みを感じた体のあちこちが、大きい物で直径1センチの大きさで赤く腫れ上がり、どれも猛烈に痒い。また熱を持っているようだ。

今から20数年前、同じ様な経験をしたことがある。当時大学を卒業し、帝人ボルボという輸入車の販売会社に就職していた。名古屋勤務となり、古いが庭に池のあるような大きな社宅に一人で住まわせてもらっていてた。庭を挟んでお隣は経理課長の社宅があり、ある休日、なにやらお隣が騒がしい。奥さんが僕の姿をみて手招きするので入ってみると、隣の愛玩犬が蛇を大きな柿木に追いつめたらしい。課長は休日出勤をしていて、家には奥さんと小さな子供達しかいないのて゛何とかして欲しいと頼まれた。日頃おかずをもらったりしていたこともあり、こうもり傘と竹の棒で青大将をビニールに詰め込んだ。

汗をかいたので、タオルで体を拭いたその直後、今回より激しい痛みとかゆみに襲われた。結論から言うと、そのときはランニングシャツとショートパンツという軽装だったから正体不明の小さなむしが汗で皮膚に張り付き、それを乾いたタオルで皮膚にこすり込んでしまったのだ。みるみる湿疹が出来、一粒一粒が大きくなって、仕舞いには面となってしまった。あまりの痛さに来ている物を脱いですぐに風呂に入ったが痛みは止まらない。それどころか暖めたせいかかゆみも増してきた。上半身はランニングシャツの形通りに白い肌と腫れ上がった赤い肌とにはっきり分かれた。「見事なマスキングだ」などとアホなことを考えいても、痛みは取れず、服も着れない。その夜は勿論床にもつけず一睡もしないで過ごした。

翌朝会社に欠勤の電話を入れたときには、かなり発熱し、ふらふらになっていたのを同僚が皮膚科に連れていってくれた。先生も僕の症状はかなりびっくりしたらしい。事情を話すと、ピンセットで傷口にささっいた微少な針をとり、顕微鏡で見せてくれた。それは肉眼では見えにくいほど小さなものなのに、先は悪意を持っているように鋭く、しかも魚を突き刺す銛のように、ご丁寧にも「返し」までついて容易には抜けなくなっている。これは邪悪としか言いようがない。結局解熱剤と軟膏をもらって帰った。先生曰く「かなりの数が入っている。これを全部とるのは至難の業だから、膿んで出てくるのを待つしかないな。」と簡単に入ってくれたが、その後二日は塗炭の苦しみを味わったのである。

青大将の祟りじゃ! いやいや数知れぬ悪行三昧の因果がである!との向きもあったが、いやいや、目にも入らぬちっちゃな虫でも、このような邪悪さを持っている。決して侮れない存在である。いわんや・・・。