企業にもライフサイクルがあり、多くの企業が倒産せず何十年も続いているのは、最盛期にまで成長し、下降線をたどろうとするとき、次から次に情報の変化を掴みそれに対応する努力をしているからだ。企業の勃興期の戦術戦略にもライフサイクルがあり、企業活動のどこかで、その企業を取り巻く環境が変化するとき、それを読みとり戦術戦略を変化させるからこそ倒産せずに続くのである。

雪印はライフサイクルの最盛期を見誤ったのだろう。人間の最盛期は20代だろう、最盛期に次の手を打っていかねばならない。だから20代で多くが子供を作る。しかし企業の最盛期は絶頂期であり、下降局面に入っていくなど普通は考えられない。今までのとおりやっていれば儲かるだろうと、何もしない企業は必ず下降局面に入り、倒産する。

日本の農業も同じ大きな問題が有ると言える。農業基本法は、日本の農業の方向性を指し示す、尤も基本的な法律で、これを元にして個別の法律が作られる。同じ年の7月に農業環境三法という法律が作られた。これは「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」「肥料取締法の一部を改正する法律」の三つが同時に作られたのである。それから行政はジワジワ政策を変換している。

なんと言っても日本は、役所の行政指導にどっぷり浸かった国だ。例えばBSEの問題でも農水省の責任を問われているが、行政指導が強いと自己努力をしなくなり、そういう意味で生産者にも責任があると私は思うが、それほど日本は行政指導が強い。この仕組みは戦中の統制経済によって作られ、だいたい1960年代にはできあがった。戦後、米軍の占領が終わり、日本の経済復興がすごく早かったのはこのシステムがあったからだ。

行政指導が完全に管理し、効率的な資本配分を行ってリーディングカンパニーを作ってその産業の景気を引っ張り、経済を復興させていった。このように日本の社会では行政の力は強く、ここはしっかり見ていないと、民間の力だけでは難しい。どんな商売でも行政の方向を見定めておく必要がある。

本題の持続還元型農業という、新しいというより古典的な農業へと、農林水産省が自然生態に則した農業の生産方法に対して有効策としてとった最初の行動がこの「食料・農業・農村基本法」である。それ以前に、複線となったのが1993年に農水省は「有機農産物及び特別栽培農産物に係わる表示ガイドライン」を出したが、これは「指導」であり有効なものではなかった。

農水省は全国から膨大な資料を集め検査し、我々の研究蓄積を通した結果、従来型の農薬・化学肥料を使った農業ではもうだめだなと、幹部官僚の半分くらいが考えたのだろう。そうでなければこの法律は通らなかったであろう。それで「環境保全型農業対策室」というのが出来た。そして紆余曲折があり、新しい基本法が成立した。

この農業の憲法とも言える基本法の最大の特徴は、第二条の「食料の安定供給の確保」で、食料自給率の向上を目指している。日本は先進国の中では一番低く、二条は自給率の向上に尽きる。

第二条 食料は、人間の生命の維持に欠くことができないものであり、かつ、健康で充実した生活の基礎として重要なものであることにかんがみ、将来にわたって、良質な食料が合理的で安定的に供給されなければならない。

二 国民に対する食料の安定的な供給については、世界の食糧の需要及び貿易が不安定な要素を有していることにかんがみ、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行わねばならない。

三 食料の供給は、農業の生産性の向上を促進しつつ、農業と食品産業の健全な発展を総合的に図ることを通じ、高度化し、かつ、多様化する国民の需要に則して行わねばならない。

四  国民が最低限度必要とする食料は、凶作、輸入の途絶等の不測の要因により国内における需要が相当の期間著しく逼迫し、又はひっ迫するおそれがある場合においても、国民生活の安定及び国民経済の円滑な運営に著しい支障を生じないよう、供給の確保が図られなければならない。

つづく