これまで堆肥は肥料として認めていなかった、従って堆肥には品質の基準が無かったが「肥料取締法の一部を改正する法律」によって品質について管理して行くこととなった。そのつぎに、「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」で家畜の排泄物を適正管理し、肥料として有効利用することにする。

イギリスの国立農業試験場の50年間の資料によれば、それまで未使用の土壌に化学肥料を入れれば、10年以内はすこぶる生産性が高くなった。20年未満なら、まあまあの生産性が維持できたが、50年後には、不肥料・無農薬の土地よりも生産性が落ちることが裏付けられた。日本の有機農業者はそれを一つの根拠としている。土が死んで行くのだ。

これまで30年以上日本で近代農業を推進してきたが、日本の農地は相当疲弊している。これ以上化学肥料・農薬は撒けない。特に、農薬の問題は過去に二回の激震の時期があった。第一は1970年代の初頭、有機塩素系農薬の全面的な撤廃と有機燐系農薬がそれに取って代わった。有機塩素系農薬とは、DDTやBHCがその代表的なもので、これらは現在使われていない。しかし、それまではとっても沢山使っていた。レイチェル・カーソンという女性が書いた「沈黙の春」という本によってアメリカはDDTを全面使用禁止した。日本はアメリカの方を見ていたから、日本でも1972年に有機塩素系農薬を禁止とした。

それに代わったものが有機燐剤であった。しかし、有機燐剤であっても化学的に作られた毒薬である以上許容量がある。睡眠薬でも、適量を飲めば眠れるが大量に飲めば死んでしまう。許容量の範囲内であれば、虫の生態に影響して虫は殺すが、人間は大きいので死ぬことはない。許容量の範囲で有ればよろしい、と言うのが基本的精神であった。だから、「有機燐剤農薬は使ってもいいですよ。しかし残留性の高い農薬はだめです。これ以上残留すると禁止しますよ。」と、0.2ppm以下とする残留農薬基準が厚生省で決められた。

これまでそれでやってきたが、農林省もどうすればいいのか分からない問題が出てきた。「環境ホルモン」である。アメリカの学者が書いた「奪われし未来」という本が世界的ベストセラーとなった。非常に広範にこの問題が追求され、環境庁も遅ればせながらきちっとした体制を整備しつつある。農薬の残留基準数値はppm(百万分の一)で表されるが、環境ホルモンの数値はppb pptという、1兆分の一とか、1兆分の10とかの単位で表される。単位が違う、スケールが違うのである。PPmの世界なら行政でも対応できる。例えば東京都では太田市場で、各地から集まった農産物を抜き取り調査して、残留農薬の検査をしている。ppmならそのような各種検査が行え得る。PPB PPtになるとチェックするのが極めて難しい。

しかし現実問題、特に妊娠初期のお母さんのお腹の胎児に、生殖器が作られていく過程に環境汚染物質がヒットすると、その影響は、その子供が成長して生殖機能が活発化する15~17,8になるまで分からない。そのときには遅いのである。環境ホルモンとは、そういう問題なのだ。

これに対して環境・厚生・農水の行政は、どう対処すればいいか分からない。だから、出来ることなら使わない。可能で有れば、農薬と化学肥料を減らす、ということになってきた。

つづく