2~30年前は、有機農業に対する認識は「物好きなことをしている」であった。それが今は、行政が明確に持続型農業を打ち出したのである。もう一つ、家畜糞尿の問題だが、アマタケさんは鶏糞を鶏舎の暖房用に燃料とされていると伺ったが、有効にリサイクルされている。

3年前に農水省が全国的に地下水の汚染に関して調査をかけた。それにより驚くべき事実が出てきた。東京都は昭和52年から、都に入ってくる農産物の硝酸体窒素の濃度をチェックしている。硝酸体窒素が高濃度で体に入った場合、最悪の場合は死ぬ。

血中のヘモグロビンは酸素の運搬機能を担っているが、そのヘモグロビンを分解するというか、ヨーロッパでは硝酸体窒素濃度が高い牧草を食べた牛のミルクを、赤ちゃんが飲んで死んだ事例があった。また、粉ミルクを、硝酸体窒素が高濃度で含まれていた地下水で溶いたものを飲んで死んだ、という二つの例があった。チアノゼレーションという。これ以降、ヨーロッパでは、硝酸体窒素のチェックが非常に厳しくなった。ドイツでは農産物の硝酸体窒素濃度に対するガイドラインがしっかり設けられているが、日本にはない。しかし、行政はここに来てとても興味を示しているようだ。

東京都の調査では、小松菜やほうれん草などの葉物が、比較的高い硝酸体窒素濃度を含んでいる。また青梗菜なども高い。著しい物は4000ppmもの濃度が検出された。300とか500ppm位が、まあいいかという数字である。それが何千もの数値が出るのはなぜなんだ。

ひとつは窒素系肥料のやりすぎだ。窒素系肥料を土に入れれば硝酸体窒素となり、体内で亜硝酸体になり、その亜硝酸体がとっても悪さをするのである。その意味で、化学肥料の多投が一つの原因である。

もう一つは、家畜廃棄物を野放しにしていたことだ。すぐに畑に投入している。小さな畜産現場では野積みにしている。大きな畜産現場では、監査が厳しいので、そのようなめちゃくちゃなことはやっていないと思うが、10頭くらい牛を飼っている農家などでは、自分とこの農地だからいいだろうと、ドーンと野積みにしている。それが地下水を汚染して、畜産が盛んな所では地下水の硝酸体窒素濃度が高い傾向にある。

これが「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」を押し出してきたもう一つの理由である。4年間の猶予を与えるから、コンクリートの受け皿・屋根を作り、外に流れ出ないよう自分の家畜廃棄物をちゃんと管理しなさい。そして循環型農業が可能なように、完熟堆肥を作り田畑に投入しなさい。と言うことである。これが有効活用・有効利用ということになる。

2000年5月の国会で、循環型 社会形成推進基本法案が出され、可決成立した。その個別法案を各省庁が出す、農水省が出したのは「食品リサイクル法案」であった。外食・食品小売業者は、排出する食品残査の20パーセントをリサイクルしなさい、食品メーカーは50パーセントリサイクルしなさい、とこの法律でいわれている。

一般家庭から出る食品廃棄物は1000万トン。ホテル・外食・食品小売業・食品メーカーなどから出る食品廃棄物は600万トン。それをこれまでは回収業者に依頼して一般産業廃棄物として焼却していた。行政はこの600万トンの生ゴミにターゲットを絞った。このうち340万トンは食品メーカーから出ている。この食品メーカーから出る生ゴミは、品質・種類が一定なので、すでに50パーセントくらいはリサイクルされていた。しかし、コンビニやスーパーから出てくる食品残滓はいろんな物が入っているからリサイクルが遅れていた。そこに行政は有効策として法的に縛ろうとしたのである。

家畜排泄物と600万トンの事業系排泄物を一緒にして堆肥化し、田畑に投入して地力を回復させ、持続循環型農業を推進させようというのが行政の方向である。まだ生産現場ではそうはなっていないが、指導はかかっている。3年から5年はかかるであろう。持続循環型農業に変わらずを得ない。

これは小売りの現場の問題と関わってくる。全国を回り、生産者・中卸の人たちとも意見交換や講演をしているが、日本の農業は深刻である。お先真っ暗、展望もない。全国の中卸の半分以上が赤字である。卸業者・JAは合併に次ぐ合併、そういう方向に行政が指導している。それでは抜本解決にはならないが、生産者はこの5年で世代交代を迎え、へたをすれば生産農家は1/3減るかも知れない。10年間で考えれば、日本の農家は今の1/3になる。それはやっていけないからで、やっていけないということは自然死を待つと言うことだ。生産者は1/3に減り、中間流通業者は半分に減る。ということは誠に熾烈な競争の時代に入るということだ。全体として高齢化・少子化である。健康指向性が高まる。環境に対する関心が高まる。このような時代背景を見通せば、小売業も今までの方法ではやってゆけない、何か手を打とうとする。しかし、現実には価格指向に走っている。基本的な消費者の心理には「価格指向」と「価値指向」がある。現在は価値指向は押さえつけられ、価格指向に走って、小売業は苦労している。軒並み前年対比が落ち込んでいる。

これから小売業が考えて行かねばならないのは、価値指向性の復権だ。商品に価値が無ければ商品ではない。価値には「使用価値」と「交換価値」があり、使用価値が消費者にアピールする。価値指向で勝負出来ないとき、価格指向に走る。

中国の生産現場にも行ったが、中国では日本の1/20の価格帯で出荷している。日本について、日本の物の1/5の価格帯で販売できるよう設定しているのだ。だから日本の農業は価格指向で勝負出来るはずがない。農水省は3割削減で中国に対抗しようと言っている。生産現場には機械化、中間流通には圧力をかけて、つぶれるものは潰れてしまえ、小売り現場でも省力化し、包装を簡素化し、なんとか3割削減して国内産と言うことで消費者に理解を求めて勝負をかけようとしている。これが行政がしようとしている農産物の流通に関する構造改革である。しかし、基本的に価格指向で行く限りでは、未来はない。

雪印食品の事件は価格指向が引き起こした端的なものだ。安けりゃいい。国内産でこの価格なら買ってくれるだろう、とラベルを付け替えた。価格指向にどんどん進むと、モラルが失われる。

つづく