釜山についてホテルに入ると、辛さんの従業員で在日のカンさんと、朴社長の甥である柳君が迎えてくれた。朴社長と辛さんは、翌日の亀岡青年会議所のメンバーと韓国の青年会議所との交流会の下準備で忙しく、別行動をとることとなった。

柳君は韓国語しか話せず、僕は日本語と京都弁と名古屋弁しか話せないので、カンさんが両方のほぼ同時通訳をしてくれた。彼女は会社ではデザインの仕事を受け持っている尼崎のお嬢さんだ。自分が書いた可愛い絵はがきをプレゼントされた。

先ず案内してくれたのが 南浦洞(ナンポドン)という釜山一の繁華街で、高級ブティックやレストラン、映画館、マクドナルドなどが並んでいて、地元の人たちで賑わっていた。ぷらぷら歩きながら、釜山港に出た。岸壁からすぐの道には、生の魚をその場で調理して食べさせる屋台が並び、あいにくの小雨にも関わらず観光客や地元の人々で結構どの店も繁盛している。魚は実に種類が多く、特にアナゴといしもちが目に付いた。アナゴは特産らしい。

げっ!こっこれは!!!プラスチックのバケツに入れられ売られていた物は、僕がもう一生見たくもない謎の生物出会った。かれこれ10年も前、魚釣りにはまっていたころの春先、取引先の米屋の主人と天橋立に夜釣りに出かけた。有名な文殊荘という恐ろしく高い旅館の敷地内に無断で忍び込み、水路を狙おうという作戦であった。そのとき米屋が用意してきた餌の一つがこの生物であった。名前はたしか「ちろり」と言ったような気がする。どのような物かというと、円筒形をしていて片方がすぼまっていて、色はピンクがかった白。手っ取り早く表現すればオチ◯チ◯をお持ちの方は実際に、そうでない方は想像していただきたい。それが軟体動物で、柔らかいと思いきや、全身筋肉の塊の様に異常に固いのである。背中に悪寒が走り、全身の毛は逆立ち、血は凍り付き、たまらない嫌悪感を感じた。何故と聞かないで頂きたい。とにもかくにもこいつだけは嫌いだ。こんな物で釣られる魚もろくな物じゃない。その「ちろり」がおったのであった。

もう少し行くと、中央市場のような建物が道の左右に並び、その中では生の魚の販売もしているし、調理してその場でも食べさせる様だが、どこも客は殆どいない。屋台の方に人気が集中しているようだ。やはり値段の問題だろう。少し早いがそろそろ夕食にしようと屋台を覗き回る。このような場合、旨い食事にありつこうとすれば、賑わっている店を選ぶのは万国共通のお約束である。貝料理専門の屋台を柳君が見つけてくれた。様々な貝を七輪で焼いて食べるのだ。

店内は声が飛び交い、ビールが酌み交わされ、燕が飛び回って(?) 給仕のおばさん(お姉さんはこの屋台も含めて殆どいない) なかなかのご繁昌。先ずビールで乾杯!目の前で焼かれているのは、バイ貝、ホタテ、大アサリの様な貝、蛤の様な白い二枚貝、そして生きたイイダコ。そしてまたもやお約束の生ニンニク、青唐辛子、味噌である。わけわからん不思議な味のするたれと醤油が各人に配られる。醤油に添えられた練りワサビの色は、アクリル絵の具とチューブを間違えたんじゃないの? と聞きたくなるような鮮やかな色であった。いずれも貝はさすがに甘みがあって旨かった。隣のテーブルを見て、柳君がアナゴを食べようと言い出した。貝と焼酎だけでは物足らない、すぐに賛成しておばさんに隣と同じ物と焼酎を追加。

来た来た。アナゴの皮をむいて10センチくらいにぶつ切りにして、野菜と共にアルミ箔をひいた七輪に豪快に乗せる。アナゴはまだ生きていて、くねくね身をよじる。身のよじりが収まりかけるといい臭いがしてきて、たまらない。骨はどうするんだろうと気になったが酔いも回って、まあええか食ってから考えようとの結論に至る。えごまの葉っぱにくるんで食べるそうだ。

いただきまぁーす!と大声で叫び、勿論アナゴから口に入れる。コリッ。????? アナゴがコリッとしてるか? このような「コリッ」のアナゴは49年間の食生活に置いても未経験なアナゴであった。「柳君。これって。本当にアナゴ?」柳君も不可解そうな表情をしている。「もももももも、もしかしてこれは!!!ヒェーッ」少し前に見たあのおぞましい生物を思い出した。気を失った。