以前から気になっていたオメガ-3の脂肪酸に関して、私にも分かりやすい本を入手しました。D・ラディン/C・フェリックス共著 訳編 今村光一の「完全栄養食ガイド」です。抽出法で作られる植物油の問題点がオメガ-3という視点でよく理解できたし、最近よく耳にするプロスタグランディンと脂肪との関係も分り、非常に勉強になり面白い一冊です。そこでこの本の一部をダイジェストしてご紹介します。是非みなさんもお読み下さい。本は1800円ですが、充分知的好奇心を満足してくれ、かつご自身の健康にも役立つ本だと思います。訳者の今村さんは弊社がマーガリンやショートニングとそれらを含む商品を止めるきっかけになった「危険な油が病気を起こしている」をはじめ癌や成人病などに関する著・訳書を多く手がけておられます。この本もお薦めです。特に食品に関わる人には必読だと思います。

「完全栄養食ガイド」ダイジェスト
発行:オフィス今村 発売:中央アート出版社
D・ラディン/C・フェリックス共著 訳編 今村光一

ドナルド・ラディン(医学博士)
ハーバード大学医学部出身。1956年から20余年東ペンシルバニア精神医学研究所の分子生物学部長や所長を務め、この間オメガ3の研究に着手。この分野の世界的権威で、多くの学者が博士の研究をガイドにしている。本書は博士のオメガ3の臨床研究を一般読者向けに集大成したもの。

クララ・フェリックス
カリフォルニア大学で栄養学を学ぶ。栄養コンサルタントで、一般向けの講演活動を行う一方、半月刊のニュースレター「フェリックス・レター」を81年から発行し一般の人への啓蒙活動を行っている。栄養関係のサイエンス・ライターとして著名。

1章 栄養学者も気づかなかったオメガ-3の重要性

現代にまん延している多くの病気が実は医学上の病気と言うより、現代の栄養欠陥とライフスタイルに関連した病気であること、現代の重大な栄養欠陥の一つがオメガ-3というタイプの必須脂肪酸の極度の不足であり、そしてまた 、いまの二点が博士の長年の研究調査と治療実験からのもつとも重要な結論である。本章ではオメガ-3不足の原因と実状、オメガ-3を含む脂肪酸の人体機能への影響、不足しているオメガ-3を補うことにより病気を治したり、より健康になったりできるかを概観的に見ておく。

アメリカの場合、過去75年ほどの間に食生活のバランスや食品そのものの変化で、現在では平均的にいって健康を維持するのに必要な20%しかオメガ-3の脂肪酸が採れていない。アメリカに限らず、日本を含む先進国ではどこでも同様な状況である。

現代のオメガ-3不足の二つの原因。
1.食品工業の「進歩」により食品が「文明化」してきたこと。現在の食用油の製造方法ではオメガ-3は破壊されてしまうことが最大の原因である。
2.オメガ-3を多く含む寒冷地の農作物より、オメガ-3が少なくオメガ-6系列のリノール酸などを多く含む温暖地の農作物へと嗜好が変化してきたこと。

現代病は相乗的誤栄養が原因で起きている
人類は感染症は克服したとよく言われるが、心臓病・癌・糖尿病・脳卒中・肥満・関節炎・アレルギー・精神分裂病などが増えている。これらの病気は食品工業の発達やあの種の食品の普及などとともに急増するようになった。博士はこれを「現代の疫病」と呼ぶ。イギリスのトロウエル博士は、アフリカに30年前にはなかった病気が1970年になり食事が現代化、欧米化しはじめるとアフリカにも起きてきたと指摘している。

「現代の疫病」とは病名や症状は違っても、みな現代の食事の中にあるいくつもの栄養的欠陥が相乗的に働いて起こしている表記であり、その意味では一種類の病気だと考えている。いろいろな病名と症状を持って現れるのは、同じ誤栄養がそれぞれの人の遺伝的体質の違いによるのに過ぎない。

1977年のアメリカ上院栄養問題特別委員会によるレポートも同様に指摘し、アメリカ国民に食事改善を訴えた。先進国の食事は動物性食品(主に肉類や乳製品)、砂糖、脂肪が過剰で、その変わり自然な穀類や野菜果物が少なく、その結果ビタミン、ミネラルといった微量栄養素や食物繊維が不足し「現代の疫病」が増えている。これらの病気は食源病と指摘し、色々な栄養上の欠陥をもつ現代の食生活が原因の相乗的な栄養欠陥病と談じた。

歴史は繰り返す—脚気やペラグラと現代のオメガ-3不足はよく似ている脚気が死の病と恐れられた期間は200年以上に及ぶ。近代的な精米機械が、米を主食とする日本を含むアジア諸国で使われだしたのは100年以上前だが、精白し白米にするとビタミンBをはじめ多くの栄養素が失われる。精米技術の発達とともに脚気は増え。今世紀はじめには脚気は何か失われた栄養素によるものだと疑われた。1930年代にビタミンB1の欠乏が脚気の原因と証明され、その後ビタミンB1が合成され脚気患者に与えられると奇跡的に治った。

ペラグラは様々な皮膚症状とともに頭も狂わせてしまう病気で、20世紀初頭にアメリカやイタリアの貧しい農民の間に大流行し、当時は精神病と考えられていた。ペラグラ患者は牛乳、玉子、肉、魚などを食べられない貧しい階層に頻発し、彼らの主食はとうもろこしであった。

しかし、とうもろこしを長く主食としてきたメキシコや中米の農民にはペラグラなど全くなかった。両者の違いは、同じとうもろこし粉でもペラグラが起きた地域では「近代的」な処理技術で精白されナイアシン(ビタミンB3)が破壊されているのが問題と分かった。

脚気とペラグラの例は、食品工業の技術的「進歩」が問題を起こした実例である。オメガ-3が現代の栄養上の「失われた鎖の輪」だということは、社会の技術的発展、食品工業の技術の展開によって犯された「犯罪」である。

現代の相乗的栄養欠陥は脚気やペラグラに比べ遙かに複雑である。そういう相乗的栄養欠陥については米上院委のレポートや世界の多くの権威も指摘しているが、オメガ-3の必須脂肪酸の決定的不足に付いては全く指摘されてこなかった。

オメガ-3の脂肪酸が多くの病気を治す
治療実験という臨床の現場ではドラマチックかつ実証的に現代のオメガ-3不足が証明されている。様々な病気の患者にオメガ-3を与えると、脚気やペラグラがビタミンBで治ったように良く治る。これでオメガ-3不足が多くの病気で起きていることが証明される。博士の治療実験の成果で最もエキサイティングなのは、見かけは違うと見える多くの症状が同時に良くなることだ。

オメガ-3とはどんな脂肪酸か?
【脂肪酸の構造】
殆どの脂肪は脂肪酸という形をとっていて、2つから20ないしそれ以上の炭疽(C)が真っ直ぐに連なった鎖になっている。10以上の炭疽が連なったものを「長鎖脂肪酸」と読んでいる。一つ一つの炭疽には水素(H)が結びついている。それぞれの脂肪によって炭疽の数や水素の数とその結びつき方は異なっていて、それがその脂肪固有の性質や味を決める要素になっている。
【脂肪酸の飽和および不飽和】
脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられる。これは、それぞれの脂肪酸の分子の中での炭素原子と水素原子の結びつき方の違いを意味する。全ての炭素原子に結びつけられるだけの水素原子が結びついている脂肪酸を「飽和脂肪酸」という。

これに対し水素原子で炭素原子が飽和されていないのを「不飽和脂肪酸」と呼ぶ。不飽和脂肪酸は水素原子で飽和されていない箇所では隣り合わせた炭素原子が二重に結合している。多価不飽和脂肪酸とは不飽和の箇所、つまり炭素原子同士の二重結合が二カ所以上有る脂肪酸をいう。

リノール酸(オメガ-6の多価不飽和脂肪酸の一つ)の構造

H H H H H H H H H H H H H H
| | | | | | | | | | | | | |
H C C C C C C = C C C = C C C C C C C C C = O
| | | | | | | | | | | | | | | | | |
H H H H H H H H H H H H H H H H H OH


アルファ・リノレン酸(オメガ-3の多価不飽和脂肪酸のの一つ)の構造

H H H H H H H H H H H H
| | | | | | | | | | | |
H C C C = C C C = C C C = C C C C C C C C C = O
| | | | | | | | | | | | | | | | | |
H H H H H H H H H H H H H H H H H OH


上記の図でアルファ・リノレン酸は炭疽の二重結合が(水素が不飽和の箇所が)左から三番目で起きていることからオメガ-3と呼ばれ、リノール酸では6番目になるのでオメガ-6と呼ぶ。

最後の炭疽原子に酸素原子(O)と水素原子(H)があり「酸」の構造になっているので脂肪のことを脂肪酸と呼んでいる。

脂肪は炭疽が一列に並び、それに水素が結びついた分子構造をしている。左右両端の形は同じでも中間の炭疽と水素の結びつきはそれぞれの脂肪 ごとに異なり、この違いがそれぞれの脂肪の性質を決めている。一番分かりやすいのは、植物油や魚油なとの不飽和脂肪酸は常温で液体なのに対し、牛油の様な飽和脂肪酸は固体であることだ。

オメガ-3と6はどっちも必須脂肪酸だが、オメガ-3がとくに大切
オメガ-3と6は必須脂肪酸といわれる。その理由は、この二種類の脂肪は細胞膜の構成要素であり、体の殆ど全ての機能に関係していて、体に不可欠なのもであるに関わらず、体内で作ることが出来ず、食物から摂るしかない。これに対し飽和脂肪は必要なら体内で(いくらでも)作ることが出来る。

細胞は細胞膜を通じて栄養を取り入れ老廃物を排出している。細胞膜は細胞にとり死活に関わる重要性を持っているし、細胞こそ生命活動の最終単位であるから必須脂肪酸の重要性が理解できる。脳の60%は色々な脂肪酸で構成され、その内オメガ-3と6の脂肪酸が最も多い。さらに言えばオメガ-3の方が多い。飽和脂肪酸は安定しているが反応は鈍い。それに対して不飽和脂肪酸は不安定だが生命反応が強い「敏感」な脂肪である。

脳細胞の間では神経刺激を伝達したり外部からの刺激を受け取ったりする反応が行われているが、この場合でも生命反応の鋭い脂肪が必要とされるのでオメガ3-や6が多く、とりわけオメガ-3が重要である。現在では「体にいい植物油」(リノール酸のことを多くの人がそう考えている)として植物油が人気を博した結果、オメガ-6は過剰であ り不足していない状況であってもオメガ-3は決定的に不足している。

オメガ-3の必須脂肪酸が不足する理由
冷寒地より温暖地の食物をより多く摂るようになった事もオメガ-3不足の一因だが、この他にも(1)穀類の精白技術の発達、(2)油脂の製造方法の変化等があげられる。穀類は精白しなければ胚芽の中にオメガ-3と6が含まれている。特に問題にすべきが油脂の製造方法の変化だ。かつては食用油は圧搾法で絞られていたが現在は殆どが化学的用材で原料の中の油を溶かし、後でその用材を取り除く抽出法で作られている。その上酸化を遅らせ、商品の寿命を延ばす目的で水素が不飽和になっている箇所に触媒を使い高圧のもと強引に水素を注入する。不飽和の部分全部に水素添加せず一部にすることが多いので部分的水素添加という。このような乱暴な方法では一番先になくなるのが最も敏感な脂肪、オメガ-3である。

さらに上記の様な製造方法では「狂った脂肪」(トランス型脂肪)と言われる脂肪の異性体が生まれ、細胞膜の中に侵入して必須脂肪酸の働きを妨害する。一方で現代的製造方法により油の中のオメガ-3は無くなり、一方では狂った脂肪のためオメガ-3の必要量は増えている。

必須脂肪酸×プロスタグランディンの働き
1982年にプロスタグランディンという第三のホルモンの研究者三人がノーベル賞を受けた頃以降、プロスタグランディンの研究が進み、必須脂肪酸の働きもより詳しく分かるようになってきた。オメガ-3も6もプロスタグランディンの原料だった。

プロスタグランディンは古典的なホルモンが内分泌腺を通じて全身を支配するホルモンであるのに対し、体中の組織の働きを部分的に支配する働きをする。その働きの範囲は広く、体の全ての機能に関係している。従ってプロスタグランディンノ生成がうまくいかないと体に当然多くのトラブルが生じる。

例えば、食物を消化する消化器官が自分自身を消化してしまわないのはプロスタグランディンがそれを防いでいるからだ。消化器の潰瘍は消化器の壁を保護するプロスタグランディンが不足しているかよく働いていないと考えられる。博士の治癒実験でもオメガ-3を多く含む亜麻仁油を与えることにより目立ってよくなったり完治している。

重要なプロスタグランディンであるがその種類は多数有り、それらが互いにバランスをとって体の機能を健全に維持している。過不足は良くない。オメガ-3と6から作られるプロスタグランディンは別の種類だ。オメガ-6は現代の普通の食事で不足していないがオメガ-3は決定的に不足している。言葉を変えれば、現代の多くの病気はオメガ-3由来のプロスタグランディン不足が原因といえる。

亜麻仁油のオメガ-3がベスト
魚油にはEPAやDHAというオメガ-3の脂肪酸は有るが植物性のオメガ-3であるアルファ・リノレン酸は含まれていない。亜麻の種から作られる亜麻仁油は60%もオメガ-3脂肪酸が含まれる。病気治療には亜麻仁油が最適。
(1)EPAやDHAの多い魚油と違うオメガ-3であるアルファ・リノレン酸を大量に含むのは亜麻仁油だけ。アルファ・リノレン酸は体に不可欠なオメガ-3系列の必須脂肪酸の中の基礎的オメガ-3であり、特別なタイプのプロスタグランディンの生成に関与するある種の酵素に影響を与える唯一の脂肪酸である。
(2)亜麻仁油も亜麻の種もギリシャ・ローマの昔から調理や治療に使われてきた歴史と実績がある。
(3)亜麻仁油は魚油に比べずっと使いやすいし、必要な場合は大量にとっても問題がない。ドレッシングなどにも使える。
(4)非常に安価である。
(5)多くの治癒実験において高価が確認されている唯一の油が亜麻仁油である。

人間や猿は、とうもろこし油では病気になる
1970年代にイギリスの学者は猿をとうもろこし油で飼った。猿は二年の内に病気になり、皮膚炎、下痢、脱毛、痴呆症などを起こし、精神的に狂う猿もあった。餌は実験動物用の標準的なもので、事実ネズミその他の実験動物の場合、特にこの餌で問題はなかった。

研究者は餌に問題があると思い、亜麻仁油を加えたところ、二ヶ月以内に猿の病気が治った。この実験は、ネズミなどではとおもろこし油に含まれる少量のオメガ-3脂肪酸で充分だが、猿のような霊長類では不十分だということを示したと解釈できる。人間もこの餌と同様な食事では、猿とおなじく色々な病気になるのに、これが実は現代社会の平均的な食事なのだ。

多くの専門家達が現在の食事の中の他の問題には気づきながらも、オメガ-3の必須脂肪酸に関して何も気づいていないことが大きな問題だ。

亜麻仁油の摂取量
健康人なら、小さじ一杯程度の亜麻仁油を毎日補うとオメガ-3の最低必要量、約2グラムが補える。オメガ-3は酸化しやすい脂肪だが、空気を追い出して不活性ガスを容器に詰めたり、自然な酸化防止剤ビタミンEを加えたりすれば、何ヶ月も本来の品質を保ちうる。

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ここまでが第1章を簡単に纏めたものです。後・・・
2章 オメガ-3が現代病の原因
3章 多くの病気がオメガ-3で治せる
4章 オメガ-3を不足させない食事作戦
5章 オメガ-3の補給で健康になろう

訳者あとがき
と続きます。後はご自分でお読み下さい。最後に。大多数の読者各位のご期待を裏切り、今回は「おちゃらけなし!」だったことを折衷よりお詫び申し上げます。