神戸牛を見に行った。神戸牛の味見の方法は他府県産とは一風変わっており、ずらっと牛を並べて繋いでおき、ぺろっと鼻面を舐めて「う~ん。この子は味が濃いいねえ。」とか「こいつはいまいち脂の乗りが…。」とか判断するのだ。時には逆に味見されることも…。

と、いうのは前日私が見た夢で、実際には神戸市兵庫区にある帝神畜産(株)という会社にお邪魔して、神戸中央市場での競りに連れていって貰ったのだ。この会社とは、東京で催されたある展示会で出会ったのだが、私が興味を覚えたのが展示ブースに「神戸牛取扱い日本一」と書いてあったからである。

全国に有名ブランド牛は多々あるのだろうが、とりあえず関西では神戸肉は松坂牛・近江牛と並ぶ三大ブランドの一つである。しかし、血統的に「神戸牛」なるものは存在しないし、全部が全部神戸で飼育されているのでもない。昭和58年に神戸ビーフの品質とブランドを画一化するため生産、流通、消費にかかわる関係団体が一体となり「神戸肉流通推進協議会」が発足し神戸ビーフの定義が定められた。それによると、

1.兵庫県産の但馬を素牛として
2.兵庫県内で協議会の登録会員が肥育
3.兵庫県内の食肉センターに出荷され
4.肉質のランクがA5またはA4の良質のもの

であり、更に体重が470Kg以下でなければならず、肥育期間は28ヶ月~60ヶ月以内であることなど、非常に厳しい条件を満たしたものだけが「菊の判」が押され(写真1) それ以外は1~3の条件をクリアしていても「但馬の判」しかもらえない。(写真2)

神戸中央市場では神戸牛の競りは月に三回行われ、「神戸ビーフ品評会」とされている。今回は第183回だそうだ。場合によっては他府県産の牛も混ざることもあるそうだが今回は62頭全てが但馬牛であった。競りの前に先立って下見が出来るのだが、第一印象は「ありゃ。やっぱちっちゃいな」であった。大阪南港市場での写真と比べると二周り程は小さい。http://www.friendfood.jp/menu/gyuniku.htm その分ロースの芯もバラ肉も薄いが、外側の脂肪層は薄く骨も細い。ロースの芯がハート型になるのが但馬の血統の特長だそうだ。(写真3)

但馬の子牛は松坂や近江に出荷され、それぞれブランド牛として肥育される。但馬の牛は他府県産の血が一滴も入っていない純血で、BSE発生以来子牛の価格が高騰し、松坂などでも他府県産子牛を肥育する事もあるようだが市場での価格はかなり劣る。

全ての競りが終了した頃には、半袖ポロシャツの上に使い捨て白衣&帽子を被っただけの私と精肉部長は体が冷え切り奥歯がガタガタ状態であった。だって巨大な冷蔵庫の中で競りをしているようなものだもの。(写真4)

そののち、平清盛の塚のある兵庫住吉神社付近の焼き肉屋に場所を移し、いよいよお楽しみの本日のメインイベント「お味見」となる。神戸牛のサシ(霜降り)は屠殺直後ははっきりとせず、最低2~3週間エージング(熟成)を得るとくっきりと浮かび上がり、また味も格段に向上する。一部の小売店では数ヶ月のエージングを行っている所もあると聞いた。神戸牛はそのような長期エージングにも絶えうる牛肉なのだ。

誰でもそうなのだろうが、私も年を重ねる毎に肉類よりも、魚中心の食事に移行してきた。余程の事が無い限り、自分から積極的に「焼き肉行こうよ」などとは言わなくなった。仮に誘われてもロースやカルビ等の脂っこい肉は一口二口で充分で、せいぜいレバーを焼いたりちぢみやキムチで酒を飲んで時間を稼ぐ。納品並びに請求書はいつの間にか必ず私の目前に魔法のように置かれるから、随分損した気分にさせられるが慈悲深い私はおまけのキャンディーを口に入れつつ財布を取り出すのだ。

そんな私が、いかに使命とはいえ食べた食べた。300gは食べた(様な気がする)。あくまでもお仕事だからビールも飲まずに…(泣)。部位によって違いがあるとは言え、脂がしつこくなくさらっとしていて「牛肉」を喰ったという実感があるのである。これまで食べた中では岩手の短角牛に近く、それでいてジューシーさは全く失っていない。焼き肉を食べた後、必ず嫌になる口や喉の脂ギトギト感が少なく、お口直しはお茶で充分であった。
(写真5・6)

写真1 写真2
写真3 写真4
写真5 写真6