古いワニ皮のバッグを甦らせようと、蜜蝋系ワックスを一瓶何ヶ月に渡り擦り込み、仕上げにシリコン系保存料をスプレーして磨きまくった。 誤算だったのが、思惑の外スブレーの噴霧角度が広すぎ、知らず知らずのうちに床にも付着していた事であった。

夜中に用を足しに行こうと現場を通ると、シリコンのため摩擦係数を減らした床に対して、スリッパは私の体重を維持できず水平方向に素早く移動した。 果たして私の脇腹は机の一辺に激しく激突した。当然痛みはあったが、仕方が無いので当日はそのまま就寝するも、翌朝は息を吐いても吸っても痛い。  動いても痛い。寝ても痛い。笑えば泣いてしまう程痛い。咳・くしゃみ・げっぷなんてとんでもなく痛い。瞼を閉じても開いても・屁をこいてもは痛くないけど、とにかくどうしていたって どうもしていなくったって痛いんだぃ!

病院に行き、レントゲンを撮ってもらうとやはり肋骨にひびが入っていた。シツプをしてコルセットでガードし、後は日にち薬。だと思っていたら二日後、 知らずに脇腹を庇っていたのか首が筋違いを起こし回らなくなる。時間とともに痛みは増し、顔色は真っ青になり会社を中退。  翌朝またも病院に行きレントゲン。首の骨が神経を圧迫しているとのことで、今度は首にむち打ち症のような首輪、背中に湿布とゴムベルト。その上から 着衣するとまるでロボコンのよう・・・。

考えてみると、肋骨の骨折あるいはひびはこれで4回目。最初は数十年前、ゴルフのコンペを翌日に控え、少しは練習しようと素振りをした瞬間脇腹に プチッと音がしたような・・・。かまわずコンペに参加するもホール毎に痛みは増加。終了後病院に直行し、これが私の「初・肋骨ひび・骨折」であった。  その後不定期ながら、バンコクのホテルで気取った猫足バスタブで足を滑らし激突。大雪の日滑った所に歩道工事の資材が・・・。と履歴を重ね今回が 輝ける4回目となるのだ。

余談ながら年に数回、酔っぱらって寝てしまった朝目覚めてみると、下駄箱の革靴が全部見事にピカピカに磨き上げられているという不思議な心霊現象 が現れる事が有る。私の想像ではきっと、世間が寝静まった頃に妖精達が家々を回り、靴や鞄をキュッキュと磨いているに違いない。