本醸造での原料は、大豆(丸大豆又は油を取った後の脱脂大豆)と小麦と塩だけです。先ず醤油作りで一番大事な麹を作ります。丸大豆は洗浄して水に漬け、脱脂大豆の場合は散水して大きなボイラーで蒸します。昔は底に穴を開けた大樽を釜に乗せて蒸していたようです。小麦は加熱して炒り、粉砕します。

蒸された大豆と炒った小麦を混ぜて、種麹を接種して醤油麹を作ります。今では種麹を麹業者から買う醤油蔵が殆どですが、古い伝統を持つ蔵にはその蔵独特の麹菌が住み着き、醤油の個性を醸し出します。麹作りはその醤油の味や個性を決める大事な仕事ですが、今はコンピューター管理された製麹(せいきく)装置が多く使われています。

二百数十年の歴史を持つ、香川の「かめびし醤油」さんでは、今では唯一「むしろ麹製法」を守り続けておられます。それは 、 特殊な構造を持つ木造2階建ての室内で 1. 簀( す )=竹をわらで編みつないだもの。 2. 筵(むしろ)=わらで編んだ1畳ほどの敷物。 3. 麹(こうじ)=蒸した大豆+炒って砕いた小麦+麹菌 の順に、 図のように10~14段に重ねて、 4日間かけて麹(こうじ)を育てる方法です。 麹は生き物ですから、温度などの管理は大変で、徹夜が続くこともあるそうです。かめびしさんがこの製法を守り続けておられるのは、数字には出ない「味」の差があるからです。

三日から四日、30度~40度を保つと麹は良く成長して、様々な酵素類を生み出します。それを塩水とともに仕込んだのが醤油もろみです。もろみの中では麹の出す酵素が蛋白質や澱粉を分解して、アミノ酸や糖類にに変化させます。もろみは強い塩分(17~18%)を持っていますが、様々な蔵付きの酵母や乳酸菌が働き、醤油の味・香り・色が作られます。微生物の働きが無ければ良い醤油にはなりません。

醤油の香りは酵母の作るアルコールと、乳酸菌の作る有機酸が結合した香気成分です。醤油の香りを分析すると、300種類もの香りを持った複雑なものです。香りもまた微生物の多様性に係わっています。

こうして最低一年、一夏を越してもろみを発酵・熟成させ、搾ったものが醤油です。「再仕込み醤油」は仕込みに塩水の代わりに生揚げ醤油を使ったものです。