九州三日目は特急つばめで熊本から西鹿児島へ。黒豚をデリバリーして頂いている鹿児島ますやの米増社長が駅まで迎えに来てくれました。

去年の九月から農水省はバークシャー種の純血種しか黒豚と認めないと決ました。これまで「黒豚」の定義が無く、野放し状態出会ったのが、一応のルールが出来たのです。バークシャー種の種豚登録は全国合わせても雄雌併せて1000頭にも満たず、また全国の肉用の豚の内バークシャ種は1.7パーセントしかいません。黒豚ブームにより数々の黒豚製品が作られて来ましたが、その多くは白豚との雑種を使ったものか、真っ赤な偽物でしょう。南魚沼のコシヒカリ以上の貴重品なのです。また農水省の畜産試験場はDNAから黒豚と白豚を見分ける技術を開発し、生肉は勿論、加工品からも真偽が判定されるようです。

薩摩の黒豚とは、中国から琉球に渡った島豚と、薩英戦争の後入ってきたイギリス産のバークシャー種が交雑されたものだといわれています。鹿児島でも昭和40年ごろまで、薩摩黒豚が盛んに生産され、貨車で全国に出荷されていました。しかし多産で成長の早いランドレースや大ヨークシャーなどの「白豚」が入ってきて、産子数・発育日数・歩留まりなど経済効率は遙かに劣る黒豚はわずか10年前には絶滅しかけていました。

黒豚の肉質は繊細で柔らかく非常においしいもので、以前モモのカツを出されててっきりヘレカツだ、と思っていたらモモ肉と聞いてびっくりしたことがありました。それほど柔らかく味のいいにも係わらず、敬遠されたのは脂肪でした。黒豚の脂は風味のある脂肪で、鹿児島の人は「白肉」と呼ぶほどです。脂肪の多さも健康ブームから好まれなくなった原因です。

それを黒豚の一部の生産者や大学の研究者の人々が、何とか残したいという思いで防ぐことが出来、肉質の良さから大ブームとなりました。しかし、鹿児島の黒豚は本来イギリス系バークシャー種で肉質も良いのですが、県や経済連は生産効率の良さからアメリカのバークシャを導入し、今鹿児島ではその両者の血が混じり合っているのが現状です。今回訪問したこの農場でも、同様でした。

しかしイギリス系バークシャーはその特徴からすぐに分かります。六白といって鼻の先と四肢の蹄から上の部分、しっぽの毛が白くなっています。(これはアメリカ系にも共通)アメリカ系は吻がすらっと延びているのに対し、イギリス系はいわゆる鼻ぺちゃで、鼻の上部にしわが寄っています。顎はがっしりして横に広がり、耳と耳との間が広いのがイギリス系の血を濃く受け継いでいるものです。

写真は、米増さんによれば「天然記念物」のような種豚だそうです。上記の特徴を端的に備えています。豚といっても牛のような迫力と大きさで、5~600キロは有るようです。米増さんはハムやソーセージの職人でもあり、無添加の食品作りをしておられます。その食品の目で、鹿児島黒豚の中でもイギリス系のものばかりを選んで供給してくれています。屠殺された黒豚は半分に割られ、鹿児島市の(有)菊永ミートさんに運ばれて各部位にカットされて当店に送られます。2頭分をわずか15分くらいで解体する、熟練した実に見事な技です。見とれてしまいました