有精卵とは不思議な玉子です。玉子には本来受精卵と無精卵しか無いはずなのに、なんなんでしょうね。受精そのものは顕微鏡サイズの事なので受精卵が味がいいとか栄養価が高いなんてことはいさかさの影響を与えるものではありません。

有精卵とは、おそらく流通業者が作った新しい言葉で、それまでは養鶏の現場では受精卵、無精卵とはっきりした区分けをしていました。
食用卵として出荷される卵の受精・無精を判断するのは不可能です。その判別は卵を親鳥が抱くか孵卵器に入れ、受精した胚の部分を温度37.8℃、湿度70%で保てば、白玉で4日赤玉で7日目位に電球にすかして見て、胚が発達し血管が蜘蛛の巣状に広がることではじめて受精・無精が確認できるのです。
従って、有精卵が受精卵であることを証明する事は不可能で、むしろそうではない可能性の方が高いからさすがに受精卵とは呼べず、有精卵という言葉を創作したのでしょう。

有精卵を作っておられる生産者(それも有精卵の草分けで有名な方です)に「受精しているかどうか分かるのですか?」とお尋ねしたことがあります。答えは「分かりません。」でした。

卵の受精率はいろいろな条件によって変わります。特に飼料と受精率は非常に密接な関係にあります。飼料には種卵(ひよこ)を採るための栄養標準で配合された繁殖用飼料と採卵用としての栄養標準で配合された飼料があります。
採卵用の一般的な配合飼料を与えておれば受精率はほとんど0に近く、受精卵は生まれません。繁殖用飼料を与えれば可能性は高くなりますが、飼料代が30~35%よけいにかかってしまいます。その上玉子を生まない雄の鶏を養わねばならないのですからそのような高価な飼料を使うとは考えにくいと思います。

雄と雌と一緒に飼うのが自然だと言う人もおられますが、家畜や家禽に「自然」を求めるのも何か変な気がします。進化論のチャールス・ダーウィンも「地中海地域の鶏はすでに抱卵本能を失っている」と言っています。それより家畜や家禽にとって最適で人にとっても安全な環境を作ることを考えるべきでしょう。

以前ある養鶏場を見学したとき、事務所に養鶏の業界新聞があり、見出しをみてびっくりしました。「有精卵の出荷を自粛しよう」というものだったからです。その記事を読んでいくと「孵卵器に入れても胚が発達しない玉子は日持ちが悪いので出荷を自粛しよう」という内容でした。有精卵が万が一受精していたとしても、上記の条件で保存しない限り死んでしまい、すぐに腐敗が進行します。

「放し飼い」も牧歌的で聞こえはいいのですがリスクを伴います。先ず鶏がなにを食べるのか分かりません。野生の鳥と鶏の病気・寄生虫は一致しています。何年か前に香港で新種のインフルエンザが流行し、鶏を大量に処分したことがありましたね。あれはシベリアからの渡り鳥から鶏にもたらされたものだろうと言われていました。

放し飼いでは糞の回収は不可能です。微生物に頼って糞の分解をさせるなら、300坪に5羽程度なら可能だろうと言われています。でもそれではビジネスとして到底成り立ちません。

EPAが入っているとかDHAが多いとかヨードが多いとか、いわゆる機能性玉子ですが、国民生活センターの調べでは殆ど役に立たないことが分かりました。厚生省も機能性玉子は「限りなく加工食品に近い」と何らかの規制に乗り出す構えです。「ヨード卵・・」はアメリカに進出を計りましたが当局から甲状腺障害を引き起こす恐れがあると販売を禁止されました。

きちんと美味しい玉子を安全に作るのにコストがかかって高くなるのは仕方がないことですが、物価の優等生玉子を本来からかけ離れたよけいな付加価値をつけて高く売ろうというのは絶対に間違っていることで、殆ど詐欺ではないかと私は思います。
玉子について面白い話はまだまだありますがまたの機会に。