(NO1よりつづき)
2   からだにわるいとけなされているものは、本当に体に悪いのか・・・酸性食品や砂糖など
「もし今でもアルカリ性食品は体にいいなどという人が居たら、彼の言うことは、すべてデタラメとおもっていいです」と、専門家は断言しました。そして、ずいぶん強い表現だけど、これくらいのことをいわなければ、世間にはびこる「アルカリ性食品信仰」は終わらない、と言葉をつぎました。(食品には酸性食品とアルカリ性食品があり、大量に摂取すると体液や組織のpHを酸性食品は酸性に、アルカリ性食品はアルカリ性に変えるという仮説。弱アルカリ性になると健康にいいといわれた。ただし、これは食品がからだのなかで燃焼したあとの物質が酸性かアルカリ性かということで、梅干しのような酸っぱいものが酸性ということではない。)

いったいこのウワサをどのくらいの人が信じているのかと、群馬大学の高橋久仁子先生は二千人規模の過去四回行いました。するといつでも次頁のグラフのように、一般成人の半分以上が「アルカリ性食品はからだにいい」とおもていることがわかりました。高橋先生がこんな調査を考えたのは、大学での講義中、栄養学の常識とずいぶんかけはなれたことを、言ったり、信じている学生があまりにおおいのに驚いたからでした。

この酸性食品、アルカリ性食品にしても、もうずいぶん前からマスコミをにぎわしていました。そして一度は完全に否定されたはずなのに、まだ半分以上が信じている・・・たぶん野菜など健康にいいというイメージのある食品の多くがアルカリ性食品ということで、アルカリ性ならけんこうにいいという迷信が残ったのなもしれません。

しかし、はっきりいいますが、アルカリ性や酸性のものを食べたり飲んだりしても、血液や組織のpHは簡単に代わりません。ですから、食品を酸性アルカリ性に分けることすら無意味だというのが、いまの学会の共通の理解なのです。そして高橋先生が調べていくと、さらにおどろくべきことがわかってました。

酸性食品悪玉説は、砂糖とも結びついて、「酸性食品である砂糖をとりすぎると血液が酸性にかたむく。それを中和するために骨からカルシウムが溶けだし、カルシウム不足を引き起こして、子供の骨折やイライラの原因になる」といわれているのですが、普段からきちんと料理を作ったり、健康に気を配っている人ほど、このウワサを信じている割合が高かったのです。

「まじめな人ほど、食べ物信仰の落とし穴に入るようです」と高橋先生はいいます。そして、そんな人たちが共通して「だめな食品」「危険な食品」と信じて排斥しているのが、砂糖、化学調味料、食品添加物、炭酸飲料、ファーストフードなどの食品でした。

名前が出たついでに、これら「けなされる」ことの多い食品に対する誤解も、少し晴らしてておきましょう。例えば砂糖。

牛乳に入れるとカルシウムをこわし、グレープフルーツにかけるとビタミンCを破壊するという素朴な間違いはこの際おきましょう。砂糖にビタミンCを破壊する力はないし、元素であるカルシウムはこわれることはありません。

しかし、砂糖には、日米で大きな風説がつきまとっています。ひとつは、先ほどの砂糖を大量に摂るとカルシウムが流出するという日本生まれの風説。もう一つがアメリカで流布している、砂糖を大量に摂ると、血糖を下げるインシュリンが血液のなかに出過ぎて低血糖になり、それが精神的な病気や非行を起こす、というものです。

アメリカでの砂糖排斥は、日本以上に厳しく、米国食品・医薬品局(FDA)は、1986年、砂糖など糖質系甘味料が健康に及ぼす影響を総合的に検討し、虫歯には影響するが、そのほかの疑惑については、現在にのところ、有害を示す証拠はないと報告しました。その後、WHOなども、調査の結果、おなじような報告をしています。

たしかに、どんな人も砂糖で低血糖になるのなら、糖尿病を診断するときのブドウ糖負荷試験はできないとこになります。これは一度に75グラムものブドウ糖を飲んで、一度あがつた血糖がむ、時間ごとにどのくらい下がっていくかを見る検査ですが、こんな検査ができるのも、低血糖になる人がごく稀だからです。

もう一方のカルシウムの流失についていえば、無機質を殆ど含まない砂糖は、酸性食品でもアルカリ性食品でもありません。ですから、砂糖のとり過ぎが血液を酸性化させることはありません。非行少年の食生活が乱れているのは事実かもしれませんが、それは非行の原因ではなくて結果ではないか、と高橋先生は考えています。

化学調味料はどうでしょう。主成分が刺激伝達物質に近いグルタミン酸ナトリウムのせいか、脳への影響がずいぶん懸念されています。とくにいまは、頭がよくなるといわれた昔とは逆に、幼い子どもの脳に悪く影響し、知能を低下させるという風評があります。

ただ、その元になった実験は、動物に大量に注射で与えたときのものです。餌と共に与えたときは、大量であっても根注射のときにみられた神経や内分泌の異常は報告されていません。

化学調味料をつかうと、塩分をとりすぎてしまうという風説もありますが、実験の結果、化学調味料を加えた方が、少量の塩分でもしっかり感じることがわかりました。

化学調味料はふだん煮干しやかつおぶし、昆布で出汁をとっている人や、その味が嫌いだという人には不要なものです。しかし、料理の味か゛いまひとつ物足りないというとき、化学調味料を一ふりすれば、、料理の味がかわります。風説を信じたために、まずいものを食べることになったとしたら、これは一つの不幸です。

私たち暮らしの手帳が、昔から化学調味料の役割を認めてきたのも、はっきりしない健康に対する不安より、現実においしい料理やみそ汁を食べるほうが、毎日の暮らしにずっと貢献できるとおもってきたからです。

最近は、ごく微量でも作用されるといわれる内分泌攪乱物質(環境ホルモン)の出現で、すべてにあてはまるか疑問になりましたが、とにかく、食べ物が危険だ、危ないといわれるとき、しばしばこの量の問題が無視されていることがあります。

たとえば、ある物質をエサの5パーセントまぜてマウスに数ヶ月与えたら、がんができたというデータがあったとします。ああ、やっぱり危険なんだと、すぐ鵜飲みにしないで、こう考えてください。

私たちが一日に食べる食べ物の重さは約1~1.5キログラムですから、5パーセントはざっと50~75グラムになります。こんな量の食品添加物を、ふだんの生活で、数ヶ月も食べ続けることがあるでしょうか。

加工したものより「生」がいい。その気持ちはわかります。「生」なら自分で調理し、入れたものもわかります。暮らしの手帳も、着色料など不必要な物はできるだけ使わないように求めてきました。しかし現在、食品添加物をまたく摂らない食生活は、ほとんど不可能ですし、豆腐のニガリなどの食品添加物は欠くことか゛できません。

専門家の一人は、スーパーやコンビニで売られている加工食品を「救慌食」だといいました。生産地から離れ、たくさんの人間が住んでいる都会の飢えをしのぐための食べ物は、遠路、時間をかけて運んでも、変質せず、安全なものでなくてはなりません。この救慌食に添加物は必要です。いろいろなグループが、食品の危険をいう背景には、大企業や国に対する根強い不信感を感じます。昭和四十年の公害はなやかな時代、その態度にはひどいものがありました。史実をかくし、都合のいいようにねじまげ、その上で自分達の利益を追求していきました。いまも、その名残はみられます。

しかし、当時とくらべて、今の食品は安全で安心なものが多くなりました。それは生協はじめ、手弁当でつづけた市民運動の大きな成果です。

けなされることの多い食品添加物や化学調味料、あるいは炭酸飲料にしろ、使わなくて済む人はそれでいし、食べたくない人は食べる必要はありません。ただ、頭からわるいものだと決めつけて攻撃するのは、「食べ物信仰」の一つで、妥当ではありません。

つづく