植物の乾物の96%がC=炭素(45%)、O=酸素(45%)、H= 水素(6%)で、残りの4% に多くの微量元素が含まれる。その4%の中で最も大事なのが窒素です。

植物は水と空気と無機元素からブドウ糖をはじめとする有機物を作りますが、炭酸同化作用では、ブドウ糖(C6H12O6) からリンを使って多糖類(デンプン)を作り、多糖類(デンプン)と窒素でアミノ酸のベースを作ることが窒素同化作用です。そうして出来たアミノ酸のベースと他の元素で各種アミノ酸を作ります。

土壌中の窒素が不足すると成長が著しく悪くなります。窒素欠乏は葉緑素の生成を阻害するため光合成が出来なくなり、収量が上がらず、ひどい場合は枯れてしまいます。

空気の約80パーセントは窒素ですが、植物は直接空気中から吸えません。窒素はアンモニア体窒素(+イオン)と硝酸体(-イオン)があり、土壌はマイナスイオンのためアンモニア体窒素を抱いてくれるのですが、ショウ酸体窒素は土壌溶液中でフラフラしています。従って、硝酸体窒素は即効性はあるのですがすぐに流れてしまいます。アンモニア体窒素は遅効性なのですが長期性を持っています。

畑作物は主としてショウ酸体窒素で、水稲では主としてアンモニア体窒素で吸収されることが多いのです。
●無機肥料としての窒素
硫酸アンモニウム=硫安 塩化アンモニウム=塩安 即効性があり計算し易い。
●有機肥料
鶏糞・魚腸骨・油かす…ぼかしは異化のコースを通って元素が出てくるので時間がかかる。
●好ましい窒素状態は
アンモニア体窒素NH4-N で3~30mg/100g(CEC×10%×14以下)
硝酸体窒素NH3-Nで12.5mg/100g et以下

今ほとんどのほ場が窒素過多となっています。どうゆう場面でどのような資材を使うかは土壌状態が分かった上でなければならないのに、カンや経験則だけではダメで、ほとんどの農家は基礎知識がないのが現状です。

昔ドイツや日本で「ブルーベビー」という赤ちゃんの病気が有りました。植物が過剰に硝酸イオンを吸収すれば窒素過多となります。ブルーベビーは窒素過多の牧草を食べた乳牛のミルクを飲んだ母親から生まれた赤ちゃんが、血液中のヘモグロビンが酸素と結合するのを硝酸体に妨げられ酸欠となったため、毛細血管が破裂し、全身に打ち身を負ったように青くなり死亡したという事件でした。

また過剰硝酸体の野菜と、肉類が分解されてできるアミンが結びつくと強い発ガン性物質といわれるニトロソアミンが出来ます。

窒素肥料は早く多く収穫する目的で多用されているのですが、農業の目的は人の食物をつくることで、食物を単にエネルギー源としてのみとらえるべきではありません。一次農産品はすべての命を担っているという意識がなにより大切であるのですが、現在は野放し状態な気がします。

「牛や豚の糞尿を堆肥化して畑に使う」のも、完全に堆肥化させずに使うと窒素過多の危険が伴います。日本の食文化が洋風に変化し、肉や玉子などを大量に消費するということは、それだけ大量の家畜糞尿が毎日出ることを意味します。その後始末を畑にさせるのはよほど管理を徹底して貰わないと怖いです。畑は畜産のゴミ捨て場じゃないんですから。

「有機栽培」の農作物でも窒素過多のものが増えています。毎作ごとにきっちり土壌分析をして、足らない物は足し、過剰な物は入れないという農業の基本姿勢を守って欲しいと思います。

このように土作りは経験や勘だけでは絶対に出来ません。微生物性・物理性・科学性をきちんと勉強し、科学的な視野でとらえなければいい環境は作れないのです。

例えば、たいていの作物はpH5.5~6.5の範囲でしか成長しません。日本は降雨量が多いので土の中の塩基類が流れやすく、土壌が酸性に成りやすいのですが、これまでの農法では酸性に傾くとすぐに石灰をまいていました。pHは元に戻るでしょうが塩基のバランスが狂ってしまいます。塩基飽和度を60~80%にすると自動的にその範囲のpHに収まります。また塩基のバランスはカルシウム5:マグネシウム(苦土)3:カリウム1の割合が理想的です。

私は毎日15年間中央市場に仕入に行き、自分では野菜のプロのつもりでした。ある集まりの場で岩手県高品質農畜水産物生産流通協議会(DFC)のメンバーが作った野菜を試食しその美味しさにびっくりしました。

月に一度勉強会をしているとのことで、私も参加をお願いし一年間岩手県花巻市まで通いました。その勉強会では別に特別な魔法を教えているのではありません。土の微生物性・物理性・化学性を一年間かけて基礎から学びます。

参加されているメンバーは真剣そのもの。総会のあとの打ち上げでもゴルフやパチンコの話題なんて出ません。朝まで農業の話をするんですよ、あのオッサン達は。ついていけへん。

この勉強会に参加し大変勉強になりました。農業関係の知識を多少なりとも学べたことはもちろん、「食」にかかわる立場の者としての基本的スタンスが分かったような気がします。

この間、京大農学部の西村和雄先生の講演会に行って来ました。地球を玉葱にたとえると土は玉葱を剥いていって最後に残った外皮より薄いのだそうです。その土が地球上の総ての生物を養っているのですから土は大事なものです。

農水省もいい加減に補助金のばらまき行政を改め、普遍的な農業をだれもが基礎から学べる方法を考えないと日本の農業はますますダメになっていきます。6兆円ものウルグアイラウンド対策費で温泉や使いもしない飛行場を作っているようでは「何やっとるんじぁ~税金返せ!!!!!」ですね。