何年か前、NHKの番組「ためしてガッテン」で伝統的壺仕込み製法で知られる鹿児島の黒酢が取り上げられ、しかも再放送・再々放送されて黒酢ブームが全国的にまきおこり、品不足となって当店でも「坂元のくろず」は入荷が遅れがちになりました。

その番組においても医学者などの専門家や健康書・雑誌でも黒酢、中でも壺仕込みの黒酢に対する有効さをアピールしています。しかし黒酢なら何でも良いのでしょうか?

確かに酢の健康に対する効用は実証され、食欲増進、中性脂肪を減らす、善玉コレステロールを増やす、肝機能を活性化させる、疲労物質を出にくくする、殺菌効果、血圧の低下などなど・・・酢の効能で一冊の本が書けるほどです。

米酢の話その1でも書きましたが、酢が体に良いのは、酢酸・クエン酸・リンゴ酸・コハク酸等の有機酸とアミノ酸の働きです。酢には体内では合成されずに外部から摂取するしかない必須アミノ酸と、約20種類ある天然アミノ酸の総てを含みます。さらに玄米を原料とした黒酢では胚芽由来のビタミンやミネラルが豊富です。

但し、それはきちんとした造られた酢に限ります。醸造用アルコールを材料にした大量生産・即醸法による酢は有機酸は酢酸だけ、アミノ酸も殆ど含まれません。旨味のない酸っぱいだけの酢なのです。

昭和60年、衆議院物価問題特別委員会では特殊食酢(黒酢など)について議論され、農林水産省・厚生省・公正取引委員会がそれぞれの立場で調査することになりました。

下の表は日本食品工業学会誌1987年9月号と農林水産省依託経済調査会編集のニュータイプ食品生産流通等実体報告書昭和60年3月号の分析結果を合わせたものです。分析はどちらも東京農業大学醸造学科でなされました。

 

商品名 製造者・販売者 必須
アミノ酸
その他
アミノ酸
内容量 価格 100ml
単価
富士玄米酢 ㈱創健社 469 512 900 2300 255.6
ライスビネガー ㈱健康医学社 349 392 1000 2400 240.6
赤江酢 五粋 赤江酢本舗 251 346 700 3200 457.1
玄米黒酢 寿 野田発酵食品㈱ 251 346 720 2400 333.3
坂元のくろず 坂元醸造㈱ 163 202 365 2400 240
赤江の玄米酢 森谷健康食品㈱ 165 199 500 2400 480
黒壺酢 末広酵素研究所 105 125 720 3500 486.1
玄米黒酢 ミズホ㈱ 60 71 600 2800 466.7
黒酢 重久盛一醸造 29 30 900 2300 255.6


この結果研究者は「比較的高価格で販売されている特殊食酢の一部は、品質・価格に問題がある。」と結論づけています。黒酢メーカーは一様に黒酢のセールスポイントとして浮遊アミノ酸の高さを上げていますが、この分析表によりますとかなりの開きがあり、壺仕込みの黒酢であっても必ずしも高い位置にないことが分かります。

壺仕込みの黒酢はなんか非常に良さそうなのですが、糖化・アルコール発酵・酢酸発酵を複合同時発酵で行いますが、いずれも不完全でタンパク質の分解がうまくいかずにアミノ酸が少なくなっているのではないかと考えられます。

飯尾醸造の「富士玄米酢」(表では製造者又は販売者の欄が(株)創健社となっていますが製造は飯尾醸造です)は必須アミノ酸、その他アミノ酸ともにトップで、しかも100ミリリットル当たりの単価は最低です。

無農薬玄米で一度清酒を造りその後10ヶ月かけて酢酸発酵・熟成され、しっかり・きっちり造られた黒酢の実力なんですね。