「早く・安く・大量に」の時代、醤油作りにも技術革新がもたらせました。大メーカーの商品でも「本醸造」の表示があります。それらは年間どのぐらい出荷されているのか知りませんが、大変な数字でしょう。本来の、自然に任せた本醸造では不可能でしょう。そこで生まれたのが「即醸法本醸造」です。

醸造が微生物の働きによるものなら、温度を人工的に調節して早く作ってしまえ。ということから二つの即醸法が考え出されました。一つは「適温醸造方式」で、天然醸造では寒い時期に仕込み、一年はかかるのを人工的に四季を作り出し、年間を通していつでも仕込みが出来る方法です。熟成期間は一年ですが短くすることも可能です。醤油に係わる微生物は15度くらいから働き始めますので、四季から冬を除けば良いわけです。

さらに早く・安く・大量に出来るのが「温醸方式」です。常に温度を積極的にコントロールして発酵・熟成の期間を縮め、大量生産が可能となります。しかし、図1は四季の気温のグラフです。摂氏15度くらいから微生物は働き初め、複数の酵母や微生物はそれぞれの好む温度帯で働き、醤油の旨味を作り出します。ですからグラフのA.B.Cの面積の総和が醤油の旨味なのです。それに対して即醸法ではa.b.cの面積の総和は天然本醸造に対して少なくなります。

天然本醸造の醤油と比べ味が落ちるとしたら、売るためには甘味料・調味料・色素・増粘剤・保存料などの添加物を入れる必要が出てきます。和歌山の有名な古いお醤油屋さんでは、加温器を導入後確実に味が落ちました。やはり何百年もかかって先人が育んできた食品作りにかなう技術革新などあり得ないのでしょう。