5月10日の日経流通新聞に、創刊30年特集として慶應義塾大学名誉教授のインタビュー記事が掲載されていた。マーケティングの第一人者として、流通業界のこの30年を振り返り、またこの先の業界に関して書かれてあった。

「消費不振といわれながらも、工夫次第で業績が盛んなスーパー・専門店があるのは、個性があるから。コンビニ、スーパー、百貨店総て個性と哲学がないから商品も売れず人も引っ張れない。経済学やマーケティングを長年やってきた結論は「イノベーション、ローコスト、デファレンシエーション(差異)であり、別名をオリジナリティーだ。日本を悪くした言葉は「能率」である。スピードは経営的にはいいが、人生にはだめだ。だから能率という言葉から脱却して創造性とか、ゆっくり行く、個性豊かに生きるという方向にいかないと。今、流通業を救うには個性という情報を街にクリエイトさせることである。

消費者は標準化、没個性化の世界に飽き飽きしているのに、流通は気がついていながら、個性化するのは経費がかかるのではないか、教育が必要なのではないか、面倒なんではないかとしていない。しかし、面倒なのが商売だ。料理でも手間を掛けるから美味しくなり、それとおなじだ。

グローバルという言葉は、異質な価値観を認めあって深めることで、勉強になるのは南フランス、イタリア、スイス、スペインなど。小さな店でも固定客をもっている。ところが日本ではみんな規模に走った。だからダメなんだ。もう一度、日本が欧州のような商売のあり方にルネッサンスしなければいけない。今の商人たちには魂が抜けている。商人としての美学がなさ過ぎる。商いは幸せを運ぶものだ。それを忘れないでほしい。」との内容であった。全くそのとおりだと思う。

もう20年も前、私が大学を出て「帝人ボルボ」という輸入車の販売会社に入社した年、ボルボの吉田社長と村田先生が親友だった縁で先生の講演を聴く機会に恵まれた。講演の骨子は「ストーリーのある商品をストーリーのある売り方で売りなさい」というものであって、大変感銘を受けたことを今でも鮮明に覚えている。覚えているというよりも、私の商売の骨格としている、といった方がいい。食品でも、良い商品には必ずストーリーがある。「早く・安く・大量に」作られた食品にはストーリーなど無い。