下鴨店にはキッチンが二つある。一つは店内のオープンキッチン「キングハーベスト」で主に洋風のお総菜を手作りで作っている。店内で販売している素材を使い、野菜のカットから始めているためどうしてもここでの商品は割高になってしまう。4年ほどまえから始めたのだが、当初は日商1~2万円の売上しかなく、当然ロスの多さに悩まされた。しかし次第に味を覚えていただいたらしく、今ではあの狭いスペースで満足できる売上があり、常に前年同期を数十%上回ってきた。二階のキッチンでは主に和風のお総菜をかなり前から作っているが、成り行きで商品アイテムが決まり、仕入商品を小分けして並べただけのものや冷凍食品を加工したもののも多かった。だから、「大手スーパーのお総菜とどう違うの?」と聞かれると答えに窮した。長年だらだらと何も考えずに続けてきたことで、お総菜部門が他の部門のレベルから取り残されてしまった様だ。

と言うわけで、惣菜部長の退職をきっかけにお総菜改革に乗り出した。目的は手作りの美味しいものを作ってお客様に喜んでいただき、売上も利益率も上がり、従業員も定時で仕事を終える様にする。つまりお客様も会社も従業員も、三者三様に喜べるようにしようというものだ。そのための勉強に花巻のまるこうさんにも行った。

改革の柱は二つあり、一つは調理は午前中に総て終わせ、午後からは全員で翌日の仕込みをするという原則を守ること。もう一つは真空調理を取り入れることである。真空調理とは、素材を調味料とともに耐熱性のビニール袋に入れて真空包装し、スチームコンベクションレンジ(通称スチコン)で加熱するという調理法である。一つ目は簡単に理解してもらえたが、何分部門間平均年齢トップのおばさま方である、真空調理の方は自分達が長年してきたことが否定されるとでも感じたのか、なかなか乗り気ではなかった。そこで「真空調理の基礎」というビデオを購入し、お昼休みに見て貰った。やはり口での説明や活字より、ビジュアルの方が浸透性がよく、何となくこの方法の概要は理解できたようであった。そして、大根を鰹の出汁だけで真空調理してみんなに食べて貰ったところ、大根本来の甘みと味がしてすごく美味しいとびっくりしていた。

真空調理の利点は、低温調理が出来ること。味・色・香りが逃げようがないので美味しく美しく仕上がること。一度に大量にも、小量多品種にも調理出来ること。加熱後すぐに氷水で芯温を0℃近くまで下げてやれば保存がきくこと等である。今はお姉さん方と共に試行錯誤の毎日だが、結構楽しく遊んでいる。