翌日は午前9時から一回目の餌やりが有るというので名瀬のホテルを7時に出発し、奄美大島の南西のはじっこ、宇検(うけん)村を目指す。平成17年に奄美実験所が完成 し卵から一貫して育てる完全養殖が可能となった。
研究棟には稚魚の餌のプランクトンを生産する「飼料培養室」や卵から稚魚に至る「飼育室」が稚魚の成長に合わせて設置してある。
鰯・鯵・鯖などの近海で産卵する魚は孵化した稚魚が半減するのは,餌である動物性プランクトンに逆に喰われてしまうからで、マグロ等の大型回遊魚は南の深海で産卵するので動物性ブランクトンは少なく、半減するまで稚魚同士共食いを繰り返す。それらの稚魚の口が体の半分を占めているのがその証であるとの仮説を読んだ事が有るのでその点を質問してみた。 餌を適切に与えるのと、成長に応じた群れ分けをこまめにすれば共食いはあまりないそうだ。
いけすが設置されているのは大島と加計呂麻島の間の大島海峡。潮の流れも速く透明度は非常にたかい。いけすそのものは直径が30~40m。「えっ?」と言う程小さい。
一番大きいので6年育てた200Kg。鰭に光を反射させながらぐんぐん泳ぐ。写真を撮ろうと試みたが、フォーカスが水面に有ってしまい無理。
餌は冷凍の鯖。
試食のため15Kg程度のを釣り上げてもらう。
マグロは非常に神経質・臆病な魚で、以前は車のクラクションの音でも群れが暴走して網に突進して死んでしまうことも多かったそうだ。だが今は養殖技術が進み、台風や大雨で周りの山から赤土が湾内に流出し、海水が濁って見えなくなりパニックに陥ることがたまに有る程度らしい。
近大マグロの見学を終えフェリーで加計呂麻島に渡る。案内して下さったのは製塩業を営んでおられる榊さん。ざっと島を観光。戦時中の特攻ボート「震洋」の基地跡
潜水艦の侵入を見張っていた金小崎防備衛所跡や弾薬庫跡。
奄美諸島はやはり黒糖や黒糖焼酎の製造が盛んだ。案内されたのは西田製糖工場で
農家からサトウキビを集め
圧搾機で搾った汁を
このような平釜で煮詰め黒糖を得る。
島のもう一つの特産品がきび酢である。
サトウキビの絞り汁は既に糖をたっぷり含んでいるから、米やその他の穀物のように糖化の工程は必要ない。多分昔々、サトウキビの絞り汁を放置しておいた所、空気中の酢酸菌が付着して勝手に酢酸発酵したのを地元の食酢としてきたんだろう。
写真はFRPのタンク内で盛んにアルコール発酵している様子。
麹がサトウキビの糖を食べてアルコールと炭酸ガスを出す。アルコール発酵が終わり、空気中の酢酸菌が表面を覆って対流によりタンク内は少しづつ酢が出来ていく。
だけど良く分からんのがこの蒟蒻様のもの。定期的に取り除かないとどんどん厚くなり、その分売り物のきび酢が減っちゃうのだ。
きもい・・・。
さて最後に榊さんの製塩所へ。徳浜という非常に美しいビーチは寅さんシリーズの最後のロケ地で
この沖から水中ポンブで海水を引き込み平釜で煮詰め凝縮していく。
燃料はリュウキュウ松の間伐材や松食い虫で被害に有った枯れ松。
釜底に写っているのは塩ではなくカルシウムの結晶である。
源水を取り込む場所は珊瑚礁でビーチにはサンゴのかけらが散乱ている。従って榊さんの「さんご塩」はカルシウムが豊富なのだが、かえっ結晶化して製造の邪魔になってしまう。逆転の発想で、砕いたサンゴを底に入れたタンクで熟成させると使いやすい塩が出来るのだ。
加計呂麻島にきっとまた来るからねと別れを告げフェリーで大島へ。それにしても、水の美しい事!
名瀬に帰ったのは結構良い時間で、一息ついた後いよいよ近大マグロの試食なのだ! グリーンストアさんが刺身&寿司を作ってくださった。どうだ!!!
まずしっぽの方から手をつけるが、つるつる滑って割り箸でもつかみにくい。 全身トロだとは聞いていたが、意外にも脂ばかりで思っていた程旨くない。口の中が脂でねとつく。寿司はかろうじて食べられたが、腹身になるともうだめ。 翌日失望を心に抱えて伊丹に帰って来た。
数日して、グリーンストアさんから宅急便が届き、開けてみると近大マグロの各部位が短冊で送られて来たのだ。早速作りにして鮮魚部と試食。
なんとなんとこいつが旨いのだ! やはりマグロも牛肉同様エイジングが必要なんだと気づく。島で食べた脂のしつこさが無くなり旨味が増えている。メタボマグロなどと悪口を行ってた事を反省し、謹んでここにお詫びを申し上げます。